谷口たかひさです。
『コロナの影響で経済活動が停滞し、二酸化炭素排出量が17%減少、2006年と同じ水準まで落ちた』
という事が報道されました。
これをあたかも良いニュースのようにとらえる方もたくさん見ますが、
僕が個人的に感じた事をお話すると…
『京都議定書』っていう言葉を聞いた事がありますでしょうか?
1997年に温暖化防止のための国際会議で取り決められた、世界で初めての国際協定です。
その国際会議が行われた場所が京都だったので、こう呼ばれます。
内容を平たく言うと、
「温室効果ガスをこのまま出し続けるとマズイから、削減していこう」
というものですね。
もう20年以上も前から、日本を含め世界は、温室効果ガスの排出量削減の必要性について、約束をかわしていた事になります。
それではもう一度最初にご紹介した報道に戻ってみましょう。
『コロナの影響で経済活動が停滞し、二酸化炭素排出量が17%減少、2006年と同じ水準まで落ちた』
そうなんです。もちろん二酸化炭素の排出量が今減っているという事、それそのものは良い事だと思うのですが…
逆に言うと、「私たちは二酸化炭素の排出量を増やし続けてきた」っていう事なんです。
1990年代にはすでにその削減の必要性について約束していたにも関わらず、です。
もちろん二酸化炭素の排出量が増え続けているデータは毎年発表されていて、わかっている事ではありましたが、今回のニュースで、逆にあらためて突き付けられた気持ちでした。
そしてこのニュースは、今コロナでこれほどまでに経済が停滞して二酸化炭素排出量が削減されている、という事ですが、
逆に言うと2006年という全然遠くない昔は、今のコロナでの経済停滞下と同じ二酸化炭素排出量で普通に経済が回っていたという事も意味します。
また、この削減ペースが続けばまた別の話ですが、コロナがある程度落ち着くとコロナで停滞した分を取り戻そうと経済活動が急激に活性化し、二酸化炭素排出量はダイエットのリバウンドのようになるという可能性も大いにありますので、
そうなると今から50年後には、地球の温度は現在より2℃、産業革命前に比べて3℃(現在は1℃上昇)上昇し、
現在世界の人々が住んでいる場所の3分の1はサハラ砂漠の最も暑い場所と同じくらい暑くなり、住めなくなるという事が今月の8日にWEF(世界経済フォーラム)より発表されました。

「シリア難民」っていう言葉を覚えていますか?
2015年9月、シリア人の小さな男の子の遺体がトルコの海岸に打ち上げられた写真がSNSで拡散され、世界中の人の知るところとなりました。
彼は名前をアイラン君といい、ボートで命からがらヨーロッパを目指しましたが失敗し、帰らぬ人となってトルコの海岸に打ち上げられたようです。
私たちは、紛争が続くシリアでなく、安全に暮らせる場所を求めてヨーロッパを目指す何十万人もの難民の苦しみと危険な海の旅の実態を知ることになりました。
EUでは、どの国が何人のシリア難民を受け入れるかが度々議題に上がりました。
最もシリア難民を多く受け入れたのはドイツで、43,431人の受け入れを誓約しています。
これは、EU全体の受け入れの、およそ46%を占め、EU全体では約10万人のシリア難民が受け入れられました。
当たり前ですが、約10万人という数の難民で、あれほどの騒ぎになるわけです。
ちなみにですが、そのシリア難民が発生する原因となった紛争すら、気候変動との関連性が指摘されています。

上の図で、黒い部分は気候変動が原因で起きる代表的な事象の1つ、「干ばつ」を表しており、
黄と赤の部分は、シリアとイラクの難民や国内避難民を表しています。
「干ばつ」により農作物が取れなくなる事と、紛争や難民の発生の関連性が指摘されています。
上に書いたように、気候変動が進み、世界の3分の1の人が住む場所が住めなくなり、もしもその人たちが安全に住める場所を求めて難民になれば、その数は単純計算で「約30億人」。
EUが受け入れたシリア難民の約30,000倍となる「約30億人の難民」が、世界中で受け入れ先を求める形になるわけです。
そうなった世界がどうなるか、想像もつきません。
遠い未来やSF映画、都市伝説や陰謀論のような話に聞こえるかも知れませんが、
最新鋭の科学によるもので、50年というと遠い未来の話でもなく、
今生まれたばかりのお子さんが丁度50歳でまだまだ人生を楽しみ、そのお子さんに子ども、つまり私たちから見て孫ができていれば、ちょうど成人するような年齢になるでしょうか。
その人たちにそんな未来を残す事は、僕はしたくありません。
また、「50年後にそうなる」と言っても、「じゃあ50年は大丈夫」という事ではないです。
50年後に突然そうなる、というわけではなく、段々そうなっていくというものなので、もっと早い段階で様々な混乱が生じると考える方が自然です。
また日本は高温多湿なので、難民を受け入れる側、というよりも、難民になる側、となってもおかしくないと思います。
そういった事態が訪れる事を避ける為に、国連は地球の温度上昇を現在より0.5℃未満、産業革命前に比べて1.5℃未満に抑えよう、としています。
その為には、今年から二酸化炭素の排出量を毎年7.6%ずつ削減し、
あと約10年、2030年までに約半分にし、
あと約30年、2050年までには実質ゼロにする必要があると、2019年の国連気候変動サミットでは提唱されました。
あと約10年で半分、と聞くとかなり急激なものに聞こえますが、
そもそも、これまでに私たちが強欲と無関心で削減をサボってきて、逆に増やし続けてきたから、ここまで急激なペースでの削減が必要とされる状況にまで来ているわけです。
夏休みの宿題をギリギリまでせずに遊びほうけてしまって、終わり間際に徹夜をしてでもやらないと間に合わない、という子どもと、やっている事はなんら変わりはないかと。
もう本当に瀬戸際まで来ていて、今が本当に最期のチャンス、分かれ道です。
この期に及んでまだサボる事を続けてしまうと、どれだけ後悔しようが嘆こうが、取り返しのつかない状況になりえます。
『私たちが気候変動の影響を受ける最初の世代で、阻止できる最後の世代です』
ドイツに住みながら、科学者と連携し、海外/英語でないと得にくい情報を発信してますので、よければフォローしてください(インスタグラムではライブ配信も頻繁に行っています)♪
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【引用元】
<https://www.amnesty.or.jp/landing/refugee/syria.html>
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